哺乳類の中でビタミンCを体内で作ることができない動物は、ヒト、サル、オオコウモリ、そしてモルモット。これらの動物はビタミンCを外部から補給しなければなりません。
一方、多くの動物たちにとっては、ビタミンCは体内で合成できる物質であり、特にヤギは多くのビタミンCを体内で作ることができます。
面白いことに病気になったヤギは体内で通常の約6倍以上ものビタミンCを合成すると言われています。健康時のヤギは人間換算で1日14gのビタミンCを体内で作っていますが、病気になると1日100gものビタミンCを作り出して病気を治そうとします。実にすごい能力です。
こういったヤギのある意味特殊能力が、他の動物の体によいとされるヤギミルクなどの製品になっている理由なのかもしれませんね。
いずれにしても、同じ哺乳類でこうも違いがあるのは一体何故なのでしょうか。
目次
モルモットがビタミンCを合成できないのは何故?
ビタミンCの原料は皆さんもよくご存知のブドウ糖(グルコース)です。
ほとんどの哺乳類はこのブドウ糖を原料として体内でビタミンCを合成できるのですが、そのビタミンC生合成経路の最後に関わってくるのがGLO(L-グロノラクトン・オキシダーゼ)という酵素です。
ヒト、サル、オオコウモリ、モルモットではこのGLOに遺伝子変異があるのだそうです。そのためGLOがちゃんと働かず、体内でビタミンCは作られません。
何故、ヒト、サル、オオコウモリ、モルモットのGLOに遺伝子変異があるのかはわかりませんが、毎日ビタミンCを外部から摂取しなければならないことだけは確かなようです。
ちなみに、モルモットと同じげっ歯類に属する他の動物、ハムスター、リス、カピバラなどは体内でビタミンCを作ることができますし、犬、猫、ウサギも同じように体内でビタミンCを作ることができます。
私たちと意外な共通点があるモルモット、なんだか親近感が湧いてきますよね。
モルモットに必要なビタミンCの量は?
どんな動物も血管や皮膚、粘膜、骨などを丈夫に保つにはビタミンCが必要です。
モルモットは前述のようにビタミンCを外部から摂取しなければなりません。つまり、毎日適量を補給しないと健康を害してしまうということです。
大人のモルモットに必要なビタミンCの要求量はおよそ10mg/kgかそれ以上と言われていますが、ものの本によりますと15~20mg/kgは必要との記載も。
病気時や妊娠・授乳中には30~50mg/kgが必要とも言われています。
モルモットがビタミンC不足になるとどうなる?
ビタミンCはコラーゲン(動物の皮膚、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質)の生成に関係するので、これが欠乏すると皮膚や血管、骨、関節に異常があらわれます。うまく歩けなくなり、手並みも悪くなり、出血しやすくなり、免疫力も低下してしまいます。
これを壊血病(カイケツビョウ=ビタミンC欠乏症)といいます。
このままビタミンC不足が続けば死に至ることもある危険な病気です。たった2週間、ビタミンをC摂取がなかっただけで発症するとも言われています。
モルモットがビタミンC過剰になるとどうなる?
ヒトでは、ビタミンCは水溶性ビタミンなので過剰に摂ったとしても余分なものは尿と一緒に体外に排出されるので、今まではあまり大きな問題はないと考えられていました。
しかし一定量を超えて長期間摂取し続けると身体に不調があらわれることが分かってきました。
ただし、ビタミンCだけで問題になるというよりは何か別の要因が加わった時、例えば治療中の病気がある場合などにはトラブルになる場合も考えられるので、状況によってビタミンCの過剰摂取を控えましょう、ということのようです。
モルモットの場合もあまりにも大量のビタミンCをずっと摂取し続けるのでなければ、それだけで大きな問題を引き起こすとは考えなくてよいでしょう。
モルモットへのビタミンCの与え方は?
質の良い牧草(チモシーが最適)、新鮮な野菜、適切なペレット(もちろんモルモット専用)をきちんと与えていれば、サプリメントなどでわざわざビタミンCを強化しなくても大丈夫です。
ただし、ビタミンCは空気に触れたり、熱が加わったり、金属に触れたままになっているとどんどん劣化していきます。
つまり、牧草も野菜もペレットも保存方法が悪いと、それらを食べても中に含まれていたビタミンCが既に失われているので、しっかり摂れていないこととイコールになってしまいます。
そういったことを意識してごはん類を保存するように心がけてくださいね。
牧草もペレットも最後まで使い切るのではなく、残りの1/4くらいは捨てて常に新しいものを与える、くらいの思いきりの良さも必要かもしれませんね。
また、飲み水にビタミン剤を添加して与える場合でも、飲水ボトルでは吸い口の金属部分でビタミンCが壊れやすくなってしまうこともなきにしもあらず。心配し過ぎかもしれませんが、せっかく添加して与えるのならば、しっかり効いて欲しいものですよね。いろいろなことを想定してこまめに交換するなどの配慮が必要でしょう。
まとめ
モルモットはブドウ糖からビタミンCを生合成する時に関与するGLO(L-グロノラクトン・オキシダーゼ)という酵素に遺伝子変異があるため、生体内でビタミンCを作ることができません。そのためビタミンCの必要量を毎日補給してあげなければなりません。
1日の必要量はおよそ10mg~20mg/kgと言われています。病気時や妊娠・授乳中にはもっと多くのビタミンC、およそ30~50mg/kgが必要とも言われています。
ビタミンCが不足・欠乏すると壊血病と呼ばれる皮膚や血管、骨、関節に異常をきたす病気に陥ります。
過剰摂取が大きな問題にはなることはほとんどありませんが、さまざまな要因(不定切な食事、他の病気の治療との兼ね合いなど)が重なるとトラブルになることもあります(シュウ酸カルシウム結石ができる、など)。
また、ビタミンCは壊れやすいので食べ物の保存方法には十分注意を払い、なるべく新しめのものを与えるよう心がけましょう。