実験動物は是か非かではなく・・
モルモットを飼育していると、こんなに可愛い動物がどうして実験動物として使われなきゃならないのかと思うことがあります。普通に考えるととてもかわいそうでいたたまれない気持になりますよね。
でも、もし実験動物としてのモルモットが存在しなかったら、私たちの病気のいくつかは未だに解明されなかったかもしれません。実際、ジフテリアの病原体はモルモットを用いた研究によって解明されていますし。そう考えると人間のエゴかもしれませんが、やはり実験動物としてのモルモットは必要なのかもしれません。
あるいは、こう考えることも出来ます。可愛いモルモットではなくネズミだったらどうなのか。それとも実験動物ではなく食用だったらどうなのか。モルモットは元来食用として飼われていた家畜ですし、南米ペルーでは今も貴重な食料となっています。それでも「かわいそうだ!」となるのでしょうか。
以前、たまたま実験動物の飼育施設を見学させていただく機会があり、その素晴らしい飼育環境に驚いた記憶があります。一定の温度・湿度に保たれた静かで清潔な飼育ケージの中で、栄養バランスの取れたフードをたっぷり与えられたモルモットやマウスがのびのびとしている様子は、まるでストレスとは無縁の世界のようでした。きちんとした実験データのためには健康でストレスのない環境が必要なのだと説明されて納得したのを覚えています。
管理人もモルモットの飼育にはけっこう自信を持っていますが、それでも実験動物の飼育施設に比べたらまだまだです。それほど実験動物の飼育環境は秀逸です。ですから、愛玩動物として飼われているモルモットが幸せで、実験動物として飼われているモルモットが不幸でかわいそうなのか、一概には言えないと思います。ですが、私たちが薬を利用するときも薬品を含む商品を使用するときも、実験動物の存在に感謝し、驕らずに生きなければならないことだけは確かです。
すみません、話が少しズレてしまいました。今回は実験動物が是か非かという話ではなく、モルモットがなぜ実験動物として使われるのか、なぜ実験動物として適しているのか、そこに焦点を当ててみたいと思います。
モルモットは繁殖能力が高い
モルモットは妊娠期間こそウサギの約2倍(2ヶ月ちょっと)必要ですが、生まれた子供の成長スピードはウサギよりずっと早く、生後2日目から自分でごはんを食べるようになり、2ヶ月もすると成体になります。メスはその後、1年で2~3回出産をします。1回のお産で2~4匹生まれます。
繁殖能力が高いということは、個体の条件を小さな単位で「同じ」にしやすいので実験動物として適しているのです。
モルモットはヒトと共通点がある
哺乳類の中でビタミンCを体内で作ることができない動物は、ヒト、サル、オオコウモリ、そしてモルモットです。実験動物はできるだけヒトに近いもの、つまり共通点を持っていることが重要です。ヒトと同じくL-グロノラクトンオキシダーゼ(ブドウ糖をビタミンCに変換する酵素)を持っていないためにビタミンCを体内で生成できないモルモットは実験動物として適しているのです。
モルモットは薬物に対する感度が高い
例えば、モルモットはヒスタミンに対する気道過敏性が高いので喘息の動物モデルに使われますし、結核菌に対する感受性が高いことでその方面の実験に使われます。また、モルモットは皮膚がとても敏感で弱いので、化粧品関係の実験に適しています。さらに、アレルギーに対する反応が人間に近いので、アレルギーの研究には欠かせない存在です。
まとめ
実験動物が是か非かという議論は別にして、モルモットが実験動物として適している点は、繁殖能力が高く、条件の同じ個体を安価で大量に用意できること、生体内でビタミンCを合成出来ない点がヒトと同じであること、薬物に対する感度が高いこと、アレルギーに対する反応が人間に近いこと、などがあげられます。
私たちは薬を利用するときも薬品を含む商品を使用するときも、実験動物の存在に感謝し、驕らずに生きなければなりません。