モルモットの尿の色が普段と違っていることはありませんか。ピンク色や茶色、赤い色に見える時は、もしかしたら尿の中に血液が混ざっているのかもしれません。見え方としては尿全体が一様に赤かったり、部分的に赤いものがポツポツ混ざっていたり様々ですが、いずれにしてもこのような時は血尿の可能性が高いです。
目次
血尿の原因
膀胱炎・尿道炎
膀胱炎はモルモットにはよくみられる疾患ですが、慢性経過を示すことが多く、症状も表にでないことが少なくありません。明らかな血尿が出ない限りは発見されにくく、意外と見過ごされることが多い疾患です。
メスの方が尿の出口と肛門との距離がオスよりも短いために糞便で汚染されやすく、感染を起こしやすいと言われていますが、実際の臨床の場ではメスとオスで明らかな差はないように感じています。
また、オスはメスと違って副生殖腺と呼ばれる生殖機能を補助する器官(精嚢腺、前立腺、凝固腺、尿道球腺からなる)が顕著に発達していますが、そこから出る分泌物(発情期に多くなります)が固まりを形成することがあります。それが尿道に詰まると尿道炎や膀胱炎の原因になると言われています。
いずれにしても、尿道粘膜や膀胱粘膜の炎症がひどくなると、出血と疼痛のためにモルモットは不快な残尿感で頻繁に赤い尿を出すようになります。この頃になってようやく症状に気づくケースがほとんどです。
腎臓疾患
腎臓の働きをざっくり説明すると、血液をろ過していらないものを尿として膀胱へ送って体外に出すことです。腎臓に異常が起こると血液のろ過機能が低下し、尿に血液が混ざってくることがあります。
尿路結石
尿路結石はモルモットに比較的よく見られる疾患です。腎臓、尿管、膀胱、尿道に結石が出来ます。オスでは尿路以外の副生殖腺でも結石が出来ることがあります。
結石はほとんどが炭酸カルシウムやリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどのカルシウム結石ですが、まれにリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結石もみられます。
原因としては、食餌内容の問題(高カルシウムや高シュウ酸を含む食餌)、飲水量の不足、遺伝や代謝異常、細菌感染、慢性的な膀胱炎などがあげられます。アルファルファが主体でカルシウム含有量が高い成長期用のペレットを大人になっても与え続けていると尿石症のリスクが高くなります。
また、ウサギ用のペレットをモルモットに与えていると尿石症のリスクが高まる恐れがあります。ウサギ用のぺレットにはモルモット用のペレットよりもビタミンDが多く含まれている傾向があります。ビタミンDは過剰に摂取すると、腸管からのカルシウムの吸収が促進されて血中カルシウム濃度が上がり、尿石のリスクが高くなります。
卵巣・子宮疾患にも注意
メスのモルモットは、卵巣に液体がたまって水玉風船のようにふくらむ疾患(卵巣のう胞)が多くみられます。卵巣のう胞になると女性ホルモンの分泌量が増えるために、刺激を受けた子宮の内膜が過剰に増殖し腫瘤ができやすくなります。つまり子宮内膜増殖症や子宮内膜炎になりやすく、出血しやすくなります。これが陰部から出た時に血尿と間違えてしまうことがあるので注意が必要です。
腫瘍
おそらく頻度は低いですが、膀胱や尿道の腫瘍、腎臓の腫瘍、卵巣や子宮の腫瘍も陰部からの出血の原因にあげられます。
食べ物の影響
赤い色の食べ物を口にすることで、その色が尿に溶け込んで赤く見える、という可能性もゼロではありません。その場合は血尿ではなく単なる赤色尿ですから、特に心配はいりません。
血尿が見られたら
どこかにケガがないか確認しましょう
まずは、ケガによる出血ではないことを確かめましょう。足のウラに擦り傷がないか、ツメが折れていないか、肛門や尿道口に傷がないか、しっかり確認しましょう。
尿の色を確認しましょう
白い紙や白いペットシーツ、白いタオルなどをしいたカゴにモルモットをおいて排尿させてみましょう。この時に水分の多い野菜、例えばレタスなどを食べさせると尿が出やすくなります。尿の色とその濃さを写真に残しておくといいでしょう。
排尿の様子をよく観察しましょう
頻繁に排尿姿勢をとっていないか、鳴き声を出していないか(痛がっていないか)チェックしましょう。普段と違う排尿の様子が見られたら、それを動画で撮っておきましょう。
動物病院に連れて行く準備をしましょう
赤い色の尿が続くようなら、糞便と混ざっていない尿をスポイトなどで採取して動物病院で検査してもらいましょう。スポイトがない場合は、小さくちぎったコットンやティッシュに尿をたっぷり浸してラップにくるんで持っていきましょう。しぼった時にぽたぽた垂れるくらいたっぷり浸み込ませるのがコツです。尿の色の写真と排尿時の動画を持っていくと良いでしょう。それらはすべて診断の助けになります。
血尿の検査
動物病院で行う主な検査内容は以下の通りです。モルモットの状態によってはこれらを省いてすぐに治療を始めることもあります。あるいはこれ以上の精密検査が必要な場合もあります
尿検査
尿の中に本当に血液が混ざっているのかどうか、結晶成分はどんなものが出ているのか、異常な細胞が出ていないか、細菌感染があるのかどうか、などについて調べます。ただし、尿の量が少ないと検査ができないこともあります。また、細菌感染の有無については持参の尿では正確に判断できないこともあります。
血液検査
血液検査は絶対に必要というわけではありません。腎臓疾患が強く疑われる時には実施しますが、それ以外ではルーチンに行うことはほとんどありません。
レントゲン検査
尿路結石やオスの副生殖腺の結石の有無を確認したり、メスの卵巣・子宮疾患の有無を確認したりするのにレントゲン検査は必要です。
超音波検査
超音波検査は絶対に必要というわけではありませんが、膀胱粘膜の腫瘍性変化をみたり、レントゲンでわかりにくいメスの卵巣・子宮疾患の確認など、必要に応じて行うことがあります。
血尿の治療
症状に合わせて治療方法を決定します。
膀胱炎・尿道炎の場合は細菌感染を伴っていることが多いので、抗生物質(モルモットに使えるものは限られています)や消炎鎮痛剤、止血剤などの投与が基本となります。
腎臓疾患では皮下輸液が中心となります。
尿路結石は基本的に手術で摘出することになります。ただし、メス(尿道がオスより太い)で結石が小さい場合はうまくすると自然に排泄されることもあるので、尿量を増やす目的で皮下輸液による水分補給を行うこともあります。
血尿の予防
こまめに掃除をして衛生的な飼育環境を整えること、お尻と陰部のまわりを清潔に保つこと。これらは細菌感染を防ぎ、膀胱炎・尿道炎の予防につながります。
食餌内容をきちんと管理し、カルシウム含有量の少ないフードを与えること、きれいな水を十分飲めるようにすること。これらは尿路結石の予防につながります。
腎臓疾患の予防に関しては飲水管理が大事ですが、これをすればいいというものが特にあるわけではないので、普段の観察を怠らないこと、動物病院での定期的な健康チェックを受けること、などで早期発見につとめましょう。
動物病院で診察を受ける際に、飼育環境の写真や動画、食べているものを書き記したものなどを持っていくとより良いアドバイスが受けられるでしょう。
まとめ
血尿が見られたら、基本的には何らかの病気があると考えて間違いないでしょう。何日も様子を見ることは避けて、できるだけ早いタイミングで動物病院に連れて行きましょう。その際に、なるべくきれいに採取された尿を持参すること(尿の採取が難しい場合は尿の色などがわかる写真を持ってい行くこと)、排尿の様子をおさめた動画を撮っていくこと、飼育環境の写真や食べているものを記して一緒に持っていくと良いでしょう。普段から健康状態をしっかり管理しておくことで病気の早期発見につとめましょう。